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作家紹介
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Mika あのとき....
Mika あのとき....
Mikaは8歳。小学三年生である。彼女の本当の親はすでにいない。Mikaが生まれたすぐあとに、飛行機事故で亡くなった。....らしい。
父、母とも多忙な人で、退院したその足で(夫婦揃って)招待された取引先の人のパーティーに向かう飛行機での事故という事になっている。
家にいるのは、高校生になったばかりのmakotoと最近生まれたばかりのMikaの2人だけ。
そろそろ飛行機が離陸する時間だなと、makotoは壁掛け時計を眺めていた。そこへ一本の電話がかかってきた。その声は紛れもなく母の声だった。
「どうしたの?今飛行機に乗っている時間だよね?」
そうたずねるmakotoに対して、母はすこし気が動転している様子だった。
「だまされたみたいなの。ひょっとしたら戻れないかもしれない。」
なにがなんだかわからなかった。ただ、聞きたくない言葉が容赦無く耳に刺さってくる。
「万が一の時のことは、台所のテーブルの引き出しの中にメモを入れてあるから。その時は、makoto頼むわね。Mikaにとって唯一のお兄さんなん...」
電話が途中で切れた。カレンダーを見た。エイプリルフールではなかった。でも、悪い冗談である事を願った。ただ、その願いは叶わなかった。
「さきほど、成田空港から出発し行方がわからなくなっていたSAL009便が、演習中のA国の軍隊の誤爆により墜落したとの報告が入りました。乗客の生存はほぼ絶望的と思われます。」
そう、父と母が乗っていた飛行機だった。テレビもラジオも、このニュースを同時に報じた。makotoは思った。これは誤爆ではないと。
もう、彼女を守るのは、兄であるmakoto以外いなくなった。
両親の遺産と、国からの保障で家政婦を雇っても、十分生活ができるだけのお金は残っていた。ただ残してくれたのはお金だけでもなかった。そう。Mikaと、「これが誤爆による事故でない」という事を知ってしまった上での危険。軍を動かすくらいの相手だ。それを知られたと知りながらほっておくなんて可能性はかなり低いだろう。
万が一の時に、取引ができるように「弱み」を探しながらのまるで綱渡りのような生活が始まった。
−運がいいのか、何事も無く時が過ぎていった。
ただ、それはいつまでもはつづかなかった。情報を集める為に動いていた行動で両親を狙った相手に不信がられはじめたからだ。
明日はMikaの小学校の入学式だ。
「あした、おにいちゃんが一緒について来てくれるんだよね?」
「ああ。もちろん。寝坊しないように今日は早くねるんだぞ。」
「はーい」
Mikaはmakotoにとてもなついていた。兄と妹というよりは、父と娘だろうか。
(もし万が一、俺が殺されたら....)
そう考えると、眠れない。makotoは一本の電話をかけた。
「Yuka?御願いがあるんだけど.....」
もしもの時、Mikaを守ってくれと御願いした。それくらいmakotoは危機感を感じていた。
Yukaも、makotoも、考えすぎであって欲しいと願った。
そしていつもより長い夜がすぎていった。
何事もなく、入学式は終わった。
「Mikaちゃん、一緒にかえろ!」
「Mika、もうお友達ができたのか。」
「うん。....お兄ちゃん、先に家に帰っててもいいよ。」
「じゃあ、Mikaこれだけは約束して。知らない人にはついていっちゃだめだぞ。」
「うん!」
少し不安はあるものの、makotoは家へと向かった。その友達の親とは面識があるからだ。
(ちょっと、Yukaの店に寄っていこうか)
makotoは、Cafe Black Catの窓を開けた。
「別に、心配するような事おこってないじゃない?考えすぎよ。きっと。」
「ならいいんだけど。いつもより増して気配を感じるんだ」
ホットコーヒーを飲みながら、話しているmakotoは落ち着いているようにも見えた。
「裏の依頼はするつもりはないけど....もし私が殺されるような事があればMikaを預かってもらえない?」
「.....もちろん、危険ごと抱え込む覚悟はしてるわよ。ただMikaちゃんの為にもあなたには生きてもらわないと困るのよ。」
カップの中身が空になったころには既に一時間経っていた。
「そろそろ帰らないと、Mikaが帰ってくるかもしれない」
「makotoは、Mikaちゃんのおにいちゃんというよりパパね。ほとんど」
「誉め言葉としてもらっとく。あ、どこの誰が描いたのか知らないけど、あの看板は描きなおした方がいいよ」
そして、店を出た。
「遅くなっちゃった!おにいちゃん怒ってるかなぁ」
かけあしで走って家に向かうMika。
ドカーン
家の方向から、....正確には家から爆発音がきこえた。
「おにいちゃんは?....よかった、い..」
いたと言おうとしたときに鋭利な何かがmakotoにたいして振りかかった。
ザックッッ
次の瞬間目に入ったのは、兄...であったはずの肉片が飛んでいるところだった。
ドスッッ
そして、Mikaの上に落ちた。なにがなんだかわからなかった。
となりで自分の家が燃えている事なんかすでに目にはいっていない。騒ぎを聞きつけてYukaが駆けて来た。
「Mikaちゃん?」
「お...おに....いちゃん?」
Mikaの目から涙がいまさらながら流れてきた。それはどういう涙なんだろう。純粋に兄を失った悲しみ?目の前で殺されているのになにもできなかったこと?それとも....
それを理解したYukaは、Mikaを抱きしめた。なにも言わずに、精一杯に。そのYukaの目からも涙がこぼれていた。
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